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大学の小使から小金をためて高利貸になった末造は古女房にあきたらず、おとなしい娘お玉を妾にした。お玉は父親に楽をさせたいばかりに我慢していたが男の因業な職業を知って心は離れるばかり。やがて散歩の道すがら家の前を通る大学生に思いをよせてゆく。作家鴎外の手腕を見事に示した哀感溢れる中篇。


森 鴎外
315円(税込)
『阿部一族』は殉死の問題を取り扱った作品で、封建制のもとでの武士道の意地が、人間性をぎりぎりにまで圧迫して、ついにはその破滅に至らせる経緯を、簡潔な迫力ある筆で描いた歴史小説の傑作。他に鴎外の初期歴史小説の代表作『興津弥五右衛門の遺書』『佐橋甚五郎』の二編を収める。
阿部一族

森 鴎外
315円(税込)
「安寿恋しや、ほうやれほ。厨子王恋しや、ほうやれほ」、また少女いちの「お上の事には間違いございますまいから」など、読者はこれらの文言を一度読んだら決して忘れないであろう。烈しい感情を秘めつつ淡々とした文体で描いた六篇の作品は、鴎外が晩年に到達した文学的境地を余すところなく示している。
山椒太夫・高瀬舟 他四篇

森 鴎外
315円(税込)
渋江抽斎(1805-58)は弘前の医官で考証学者であった。「武鑑」収集の途上で抽斎の名に遭遇し、心を惹かれた鴎外は、その事跡から交友関係、趣味、性格、家庭生活、子孫、親戚にいたるまでを克明に調べ、生きいきと描きだす。抽斎への熱い思いを淡々と記す鴎外の文章は見事というほかない。鴎外史伝ものの代表作。改版。
渋江抽斎

森 鴎外
525円(税込)
日本人留学生とドイツの一少女との悲恋を描いた『舞姫』、他に『うたかたの記』『文づかひ』と名訳『ふた夜』、いずれも異国的な背景と典雅な文章の間に哀切な詩情を湛える。加えて鴎外作品の初期から中期への展開を示す『そめちがへ』を収め、難読語には、できるかぎり振仮名を付して読者の便に供した。
舞姫・うたかたの記 他三篇

森 鴎外
420円(税込)
幕末、津和野藩の下級武士の子として生まれた森鴎外(1862-1922)は、藩校で漢籍を学び、上京して東大医学部で学んだ。軍医総監に上りつめ、最後は帝室博物館長として没した公的生活と小説家鴎外−封建的イデオロギーと藩籍の素養、近代ヨーロッパ文明と自然科学者の眼が同居したこの作家の息づかいが聞こえる随筆18篇。
鴎外随筆集

森 鴎外 編:千葉 俊二
420円(税込)
秀才だが世才に乏しい文三の失職を機に、従妹お勢の心は軽薄才子の昇に傾いてゆく。自意識過剰の中で片恋に苦しむ文三の姿を中心に各種の人間典型を描きながら、官僚腐敗への批判をひらめかせている。最初の近代リアリズム小説であり、その清新な言文一致の文体は明治文学の出発点となった。明治20-22年作。
浮雲

二葉亭 四迷
315円(税込)
中年の大学講師小野哲也は、見込みちがいの彼に失望した妻と義母に冷淡に扱われ、生きる興味をほとんど失ってしまう。ただ一つの光明は、出戻りの義妹小夜子の存在であった。やがて二人は道ならぬ恋におちてゆく。――知識人の自己分裂の悲劇を描き、『浮雲』以来約二十年を隔てて文壇への復帰作となった長篇小説。
其面影

二葉亭 四迷
420円(税込)
漱石の小説はおおかた読んでいるという人も、評論や講演となると十分目がとどきかねるのが実情ではあるまいか。本書は講演記録『文芸の哲学的基礎』『創作家の態度』などを主軸として、他に評論文・談話・初期の文章から文芸論にかかわる作品を選んで編成したもの。ここに尖鋭勁強な理論家としての漱石像がくっきりと浮かびあがる。
漱石文芸論集

夏目 漱石 編:磯田 光一
630円(税込)
猫を語り手として苦沙弥・迷亭ら太平の逸民たちに滑稽と諷刺を存分に演じさせ語らせたこの小説は『坊っちゃん』とあい通ずる特徴をもっている。それは溢れるような言語の湧出と歯切れのいい文体である。この豊かな小説言語の水脈を発見することで英文学者・漱石は小説家漱石となった。
吾輩は猫である

夏目 漱石
420円(税込)
『坊っちゃん』は数ある漱石の作品中もっとも広く親しまれている。直情径行、無鉄砲でやたら喧嘩早い坊っちゃんが赤シャツ・狸たちの一党をむこうにまわしてくり展げる痛快な物語は何度読んでも胸がすく。が、痛快だ、面白いとばかりも言っていられない。坊っちゃんは、要するに敗退するのである。
坊っちゃん

夏目 漱石
315円(税込)
「しつこい、毒々しい、こせこせした、その上ずうずうしい、いやな奴」で埋まっている俗界を脱して非人情の世界に遊ぼうとする画工の物語。作者自身これを「閑文字」と評しているが果してそうか。主人公の行動や理論の悠長さとは裏腹に、これはどこを切っても漱石の熱い血が噴き出す体の作品なのである。
草枕

夏目 漱石
315円(税込)
明治四十三年、朝日新聞に入社した漱石が職業作家として書いた第一作。我意と虚栄をつらぬくためには全てを犠牲にして悔ゆることを知らぬ女藤尾に超俗の哲学者甲野、道義の人宗近らを配してこのヒロインの自滅の悲劇を絢爛たる文体で描く。漱石は俳句を一句々々連らねていくように文章に苦心したという。
虞美人草

夏目 漱石
420円(税込)
大学入学のために九州から上京した三四郎は東京の新しい空気のなかで世界と人生について一つ一つ経験を重ねながら成長してゆく。筋書だけをとり出せば『三四郎』は一見何の変哲もない教養小説と見えるが、卓越した小説の戦略家漱石は一筋縄では行かぬ小説的企みを実はたっぷりと仕掛けているのだ。
三四郎

夏目 漱石
315円(税込)
若き代助は義侠心から友人平岡に愛する三千代をゆずり自ら斡旋して二人を結びあわせたが、それは「自然」にもとる行為だった。それから三年、ついに代助は三千代との愛をつらぬこうと決意する。「自然」にはかなうが、しかし人の掟にそむくこの愛に生きることは二人が社会から追い放たれることを意味した。
それから

夏目 漱石
420円(税込)
横町の奥の崖下にある暗い家で世間に背をむけてひっそりと生きる宗助と御米。「彼らは自業自得で、彼らの未来を塗抹した」が、一度犯した罪はどこまでも追って来る。彼らをおそう「運命の力」が全篇を通じて徹底した〈映像=言語〉で描かれる。『三四郎』『それから』につづく三部作の終篇。


夏目 漱石
315円(税込)
いくつかの短篇を連ねることで一篇の長篇を構成するという漱石年来の方法を具体化した作。その中心をなすのは須永と千代子の物語だが、ライヴァルの高木に対する須永の嫉妬を漱石は比類ない深さにまで掘り下げることに成功している。この激しい情念こそは漱石文学にとっての新しい課題であった。
彼岸過迄

夏目 漱石
420円(税込)
この小説の主人公である「先生」は、かつて親友を裏切って死に追いやった過去を背負い、罪の意識にさいなまれつつ、まるで生命をひきずるようにして生きている。と、そこへ明治天皇が亡くなり、後をおって乃木大将が殉死するという事件がおこった。「先生」もまた死を決意する。だが、なぜ……。
こころ

夏目 漱石
315円(税込)
自己を語ることに寡黙であった漱石が「自分以外にあまり関係のない詰らぬ」事を書くとことわって書いた連作エッセー。記憶の底に沈んでいる体験や回想に光をあてることで静謐にして一種不思議な明るさに充ちた表現世界を生み出している。この作品は『こころ』のあと『道草』の前という漱石の晩年に書かれた。
硝子戸の中

夏目 漱石
315円(税込)
『道草』は漱石唯一の自伝小説だとする見方はほぼ定説だといってよい。すなわち、『猫』執筆前後の漱石自身の実体験を「直接に、赤裸々に表現」したものだというのである。だが実体験がどういう過程で作品化されているかを追究してゆくと、この作品が私小説系統の文学とは全く質を異にしていることが分る。
道草

夏目 漱石
420円(税込)
明治四十三年の盛夏、漱石は保養さきの修善寺温泉で胃潰瘍の悪化から「大きな動物の肝の如き」血塊を吐いて人事不省におちいった。辛くも生還しえた悦びをかみしめつつこの大患前後の体験と思索を記録したのが表題作である。他に二葉亭四迷・正岡子規との交友記など七篇。どの一篇も読む者の胸に切々と迫って来る。
思い出す事など 他七篇

夏目 漱石
420円(税込)
漱石は明治三十二、三年から大正五年の死の年まで断続的に日記やメモを書き残しており、それは全集版で八百ページを超す大部のものである。そのうちからここにはイギリス留学の日記、修善寺大患時の日記、明治の終焉時の日記など、漱石の生涯の節目となった時期の日記七篇を収録。行文から人間漱石の内奥の声が響いてくる。
漱石日記

夏目 漱石 編:平岡 敏夫
420円(税込)
漱石は親友子規の感化で俳句をつくり生涯におよそ二六○○句を残している。明治二十八〜三十二年はとりわけ熱心に作句にはげんだ時期で、子規はこの頃の漱石の俳句を評して意匠が斬新で句法もまた自在だといった。漱石の作品は俳句というこの簡便で小なるものの楽しみを多彩に示しているのである。八四八句を抄して脚註を付す。
漱石俳句集

夏目 漱石 編:坪内 稔典
525円(税込)
技量はありながらも小才の利かぬ性格ゆえに、「のっそり」とあだ名で呼ばれる大工十兵衛。その十兵衛が、義理も人情も捨てて、谷中感応寺の五重塔建立に一身を捧げる。エゴイズムや作為を超えた魔性のものに憑かれ、翻弄される職人の姿を、求心的な文体で浮き彫りにする文豪露伴(1867-1947)の傑作。
五重塔

幸田 露伴
315円(税込)
蒼茫と暮れゆく海上、その薄暗い水面にふっと現れてはまた消える細長いもの。不審に思った釣客が舟をよせると――。斎藤茂吉に「このくらい洗練された日本語はない」と絶賛された「幻談」の語りは、まさに円熟しきった名人の芸というに値する。ほかに「骨董」「魔法修行者」など、晩年の傑作五篇を収録。
幻談・観画談 他三篇

幸田 露伴
420円(税込)
道心やみがたく出家の身となった慈仁の人慶滋保胤。その彼のもとへ、愛する女の死に世の無常を悟った大江定基は身を寄せる。そして縁あってこの二人に連なる聖界・俗界の人びと……。人生の明と暗、陰と陽とが結びあい、露伴(1867-1947)ならではの広大な文学空間がひらけてゆく。併収「プラクリチ」。
連環記 他一篇

幸田 露伴
315円(税込)
正岡子規は三十五年という短い生涯の間に多彩な文学活動をおこなったが、その文学は俳句にはじまり、最後まで片時も俳句から離れることはなかった。『ホトトギス』を主宰、蕪村を再発見した近代俳句の先駆者子規の秀句二三○六句を選び、その俳句世界をあますところなくつたえる。改版にあたり初句索引を付す。
子規句集

正岡 子規 編:高浜 虚子
525円(税込)
『墨汁一滴』に続き、新聞『日本』に連載(明35.5.5-9.17)し、死の二日前まで書き続けた随筆集。不治の病についた「病牀六尺」の世界で、果物や草花の写生を楽しむ一方、シッポク談義、子供の教育論と話題は多岐にわたるが、旺盛な好奇心が尽きることのない子規の姿には全く目をみはらされる。
病牀六尺

正岡 子規
420円(税込)
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる――俳句革新運動における写生論を短歌に適用して、明治短歌革新の急先鋒に立った子規の歌風は、多用な題材を自由に歌い、子規文学の頂点の一つをなす。全歌集『竹乃里歌』より短歌八百四十首、旋頭歌六首を厳選した子規歌集の決定版。新たに初句索引を付す。
子規歌集

正岡 子規 編:土屋 文明
315円(税込)
明治三四年、子規三五歳。重い肺結核の症状に喘ぎながら、『松蘿玉液』に続き、新聞『日本』に連載(1.16-7.3)した随筆集。多様多彩なテーマが、みずみずしくユーモアにあふれた筆致で綴られ、子規の精神に拡がりと深さが鮮やかに立ち現れる。近代文学の巨星=子規が随筆家としての真骨頂を発揮した書。
墨汁一滴

正岡 子規
315円(税込)
子規が、死の前年の明治三四年九月から死の直前まで、折々に書きとめた日録。日々三度の食事の献立から病苦と死の恐怖への煩悶に至るまで、病床生活を、俳句、水彩画等を交えて赤裸々に語った稀有な生活記録。読みすすむにつれ、命旦夕に迫る子規の心境が何の誇張も虚飾もなくうかがわれて、深い感動に誘われる。
仰臥漫録

正岡 子規
420円(税込)
明治三十一年に発表された表題作は、『古今集』を和歌の聖典としてきた千年近い歴史がもつ価値観を転倒させた衝撃的な歌論であった。万葉の歌風を重んじ、現実写生の原理を究明した子規の歌論は、全篇に和歌改革への情熱が漲り、今なお我々を打つ。「あきまろに答ふ」「人々に答ふ」「曙覧の歌」「歌話」を併収。
歌よみに与ふる書

正岡 子規
420円(税込)
日清戦争の時代、家族制度のしがらみと結核にさいなまれる浪子と武男の哀切きわまりない物語としてあまりにも有名なこの小説は、数多くの演劇・映画の原作ともなって、今日なお読みつがれている名作。大山巌元帥の娘信子の哀話をもとに、明治31―32年、『国民新聞』に連載され、当時空前の反響をよんだ蘆花(1868-1927)の出世作。
小説 不如帰

徳冨 蘆花
420円(税込)
「自然を主(あるじ)とし、人間を客とせる、小品の記文、短篇の小説」を集めたと作者が言っているように、『自然と人生』(一九○○年刊)は自然をテーマとする散文詩ふうの随筆八七篇、小説一篇、論説文一篇から成る。漢語・漢文脈をみずみずしく駆使したこれらの名文は広く愛好されて一時代の文章の手本とされた。
自然と人生

徳冨 蘆花
525円(税込)
明治四十年東京を西に去ること三里、一反五畝の土地に、壁は落ち放題、雨戸は反り屋根藁は半腐り、ちょっと降ると室内にも黄色い雨が降るばかりか、ときに青大将が落ちてくる草葺の家。井戸をさらえ、肥桶を担ぐ「美的百姓」の始まりである。作者の前をよぎる人々、武蔵野の風物を骨太な筆でとらえた随想集。
みみずのたはこと (上)

徳冨 健次郎
525円(税込)
明治四十年東京を西に去ること三里、一反五畝の土地に、壁は落ち放題、雨戸は反り屋根藁は半腐り、ちょっと降ると室内にも黄色い雨が降るばかりか、ときに青大将が落ちてくる草葺の家。井戸をさらえ、肥桶を担ぐ「美的百姓」の始まりである。作者の前をよぎる人々、武蔵野の風物を骨太な筆でとらえた随想集。
みみずのたはこと (下)

徳冨 健次郎
525円(税込)

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